父方の祖父母と同居してから

私は午前中に起きられるようになった

引っ越し当日の夜は疲れから早く眠ったし

物音で起きる朝もつらくなかった

 

台所の朝食の用意や洗濯物など

大人達がパタパタ走る音で目覚めた

起きたばかりでまだおなかが空いてないと言うと

少しでも何か食べなきゃダメだと祖父が言う

ごはんなら卵を焼く?海苔も食べる?それとも

食パンにする?と祖母が笑顔で質問する

まず、これが両親との違いである

 

マンションにいた頃は

昼頃に起きて少しダラダラと遊び

空腹を感じたら食事をしていた

すでに起きていた母はいつ食べたのか分からない

先に食べたと言われた事もなかった

 

母が出す食事はよく言えば簡素、悪く言えば手抜きだった

自分の気が向いた時は張り切った事もあったが

それでもホットケーキやナポリタンなどだった

父の不在が多かったし幼稚園に通ってないので

まさに密室育児だったんだと思う

 

ここではいつまでも眠っている私を起こすまいと静かにしたり

時間稼ぎのように適当なものを食べさせる大人はいなかった

 

祖父は私にいろいろな事を教えてくれた

私も祖父のそばでいろいろな物を見て質問したりした

畑はもちろん、近くを流れる河の危険さ、日曜大工、自転車などの修理、地元の民芸品などである

収穫したばかりの野菜の味や、

雪の中のビニールハウス内の久しぶりに見る土や、温度と湿度には感動した

 

祖母は3食のご飯支度はもちろん、保存食なども大樽で作っていた

ごはんだよと呼ばれると既に各々の席に配膳されていて

みないっせいに食べ始める

もちろん祖母も食べるが、みんなの進み具合を見ていて

おかわりはいるかそれぞれ聴いていた

 

夕食が終わるとテレビで「トムとジェリー」を見た

祖父はコレ大好きなんだと嬉しそうに言った

2人で並んで見るのが日課になった

 

田舎の自然の中で私は元気に楽しく過ごした

この頃の父は家にいる事もあったがうっすらとしか記憶に無い

毎日家にいた母の記憶も断片的だ

それほど私には祖父母の存在は大きかった