祖父母の家の隣に父の従兄弟の家があった

隣と言っても田舎なので

片側2車線道路の交差点の斜向かい程の距離があった

祖母の甥家族で私より年下の女の子を含む3人が暮らしていた

カナエちゃんはハキハキした人見知りしない子だったが

私のように大人の話に首を突っ込むような事はしなかった

 

他の近隣に子供がいるのか分からない田舎で

私はカナエちゃんと仲良くなった

カナエちゃんの家に母と2人で呼ばれた事がある

カナエちゃんのママは可愛らしいけど地味な雰囲気で

若くて優しいしっかり者のママといったイメージだった

気さくでおっちょこちょいだが

モダンな見た目をした母とも仲よくなった

 

カナエちゃんは女の子のおもちゃの他に

知育玩具をいくつか持っていて

それは毎月購読している絵本の付録なんだと

ママ同士がお茶をしながら話していた

しばらくしておやつが出たので

私とカナエちゃんもテーブルについた

食パンの耳を揚げてグラニュー糖をまぶしたものだった

食べ終わったあと、カナエちゃんはママに

もっと食べたいと言ったが

夕飯が食べられなくなるからとヤンワリ断わられた

 

帰り際、カナエちゃんのママは

1人でもママとでもまた遊びにいらっしゃいと

笑顔で見送ってくれた

私は同年代の友達が出来た事が嬉しかった

 

その夜、私はお風呂で母に

カナエちゃんと同じ知育絵本を毎月頼んでほしいと言った

簡単なドリルみたいなものもやりたかったし

消して何度も書けるボードや12色のロケット鉛筆など

家でも使いたかったからである

母は笑いながら、でもアッサリと却下した

「遊びに行った時に思う存分、貸してもらえばいいんだよ

そのうちもっといい、ちゃんとしたおもちゃが売られるから

付録なんて安物買いの銭失いだよ

カナエちゃんのママは勉強にもお金にもしっかりしてるからさぁ

おやつだって自分で作ったものだし

余ってても食べさせないでしょう?」

そして自分は大人だから

物事の本質を見ぬく事が出来るけど

子供はうわべの良い部分しか分からないと

自慢げに言った

これは他人の甘い言動に騙されるなという教訓を述べていると思った私は

いわゆる ここだけの話 として誰にも話さなかった