私には脚にも特徴があった

膝から下の骨格が外側に張り出している脚である

両親はそれを「かまあし」と言った

父は自分がそうなので似たんだろうと言っていた

父はそれをたまにからかう時があったし

正座をしてはダメと言う時もあった

自宅ではテーブルと椅子で食事をするのだが

祖父母の家では足を伸ばして食べなさいと言った

その表情や口調からは

言いつけや決まり事などの堅苦しい厳しさは無く

こうすればいいんじゃない?というような

他人事のアドバイスのようだった

なのでおままごとの座卓や鏡台など

言った事を忘れたかのようなおみやげを買って来る事は多々あった

 

一貫性の無さは母にもあった

私が困惑してどうしたらいいか訊くと

面白がって適当に促す事もあれば

以前の指示を忘れたのか誤魔化してるのか

曖昧な返事をする事もあった

母は「なるようになるから先の事は案じない」と言った

 

昼間に父と2人だけだった日の事、

相変わらず父はテレビを見たりゴロゴロしたりしていた

私は近所のジュース屋さんに買いに行きたくて

おこづかいをねだった

テレビを見ながら爆笑する父が財布から出して渡したのは

小銭ではなく五千円札だった

ジュース屋は1階のスーパーの隣にあり、

確かバイク屋が本業だったと思う

ジュースは店の隅にあるガラスの冷蔵庫に入っていて

たまにスーパーの帰りにそれを買ってもらっていた

私が行くと店のおじさんは「何個?」と訊いた

紙幣が大きいお金だとは理解していたが

計算がまだ出来ない私は「買えるだけ」と答えた

その時、おじさんの顔色が変わったのを覚えている

笑顔が消え、神妙な面持ちで

1人で持って帰れるか心配そうに訊いた

思いのほかジュースの数は多かったが

大丈夫と張り切る私が店から出ると

おじさんはすぐにシャッターを閉めた

今日は私がたくさん買ったから売り切れたんだと嬉しく思った

父はジュースを見ると

驚いたものの、怒りはしなかった

そしてまたテレビに目を向けた

私は大量のジュースを1人で冷蔵庫にしまった

冷蔵庫は大きめサイズだったがジュースで埋め尽くされた

テレビでは日本のコメディーを放送していた

何をやらせてもダメな部下に上司が閉口しているシーンが何度も出て来た

さっきの父の表情とよく似ている…と私は思っていた