母と2人で

子供向けの映画や遊園地へも出かけた

 

母の実家に行くために飛行機や

時には寝台車、フェリーなどを使う時もあった

母と私は

おしゃれをして行儀よく振る舞った

 

母の実家に数日滞在すると

田舎の大人達は私に注目した

「かわいいからよ」母はよく言ったが

近所の公園で会う子供達は私を色眼鏡で見た

だから大勢の子供達がいても

私は1人で遊ぶ事が多かった

 

自宅マンションでの父とは

昼間、一緒に外出した事はないが

ひとつだけ記憶にあるのは

夜に眠ったままの私を連れ出した事である

 

甲高い笑い声と騒々しい音楽で目覚めた私は

天井のディスコライトが目まぐるしく動くのを見て

ここは普通の場所ではないと焦った

 

外出時に飲食店以外で食事を摂る場合は

小料理屋やスナックだった

カウンターキッチンと椅子があり、

年配の女性が場違いな私を気づかってくれるような場所だった

 

それが今日は

若い女性達が下着に近い姿で床にあぐらをかいて円陣に座り

その中央に父と私がいたのである

父も女性達も大笑いをしているが私は泣き叫んだ「ママはどこ?」

ディスコライトのせいで何もかもよく見えないが

「ほらママだよ」と知らない女性を指さした

その女性ははにかんでわずかに身を引いた

「ちがう!家に帰ろう」と言う私を無視して

父は女性達と笑いながら飲み続けた

私は泣き疲れて眠ってしまったんだと思う

この事は父に口止めされた記憶が無いので

子供ながらに

母には言ってはいけない事だと感じていたような気がする