母に連れられて叔母の家に行った事があった

同じ市内だが端と端で、電車に乗ったり約1時間はかかった

叔母は私の両親と違って結婚式は挙げたものの、

かなり質素な生活をしていた

自分達の実家のような平屋のアパートに

必要最低限のもので暮らしていた

私達の手土産の柿を

折り畳みのちゃぶ台の上で3人で食べた

猿かに合戦の絵本を真似て、

叔母と一緒に玄関脇に種を埋めた

夕方に帰る時、「近くに引っ越して来ればいいのに」と

笑顔で2人に提案したのを覚えているが

大人にはいろいろな都合があるんだろうと

子供心に察していた

 

数ヶ月後に叔母は女の子を出産した

私には会いに行った記憶はないので

母から話を聞いただけなのか、手紙と写真を見ただけなのかは定かではない

 

最初の訪問から約2年後、

私と母はまた叔母の家へ行く事になった

もう1歳になっていると言うサエコ

私にとって初めての従妹だったし、

初めて接する赤ちゃんだった

 

叔母の家が遠くから見える所まで行くと

叔母の足元に小さな子がいる

上は下着のシャツ、下はおしめだった

「その子サエコ?」こんなに大きくなったんだとビックリした

サエコは恥ずかしそうな笑顔で

「ネェネ」と言った

叔母は「サエコ、あんたが来るのを楽しみにしてたんだよ」と嬉しそうに言った

そしてあの時に土に埋めた柿の種から芽が出たと言った

小さなサエコは可愛かった

いつも一緒というぬいぐるみを私に紹介してくれた

薄汚れていたが愛着が感じられた

私達が仲良く遊んでいるそばで

母と叔母はお茶を飲みながら話していた

夕方、私はサエコに「またね」と挨拶して

叔母の家をあとにした

「やっぱり近くに引っ越して来ればいいのに」と母に言った

前回よりも別れが悲しかったからだった

 

でも数ヶ月後に

私と両親は父の実家で祖父母と同居する事になる